会社で負担する食事代について質問をいただいたので、
久しぶりのQ&A形式でご紹介です。
[相談内容]
なかなか人材が集まらない現状を考慮し、会社の福利厚生制度の一環と社員の定着率向上を図るため、社員の昼食代を補助する制度を導入したいなと思っています。
その制度では、
社員の昼食を1食あたり360円(税抜)で外部業者(仕出し弁当等)に注文し、
その代金を会社が業者に支払った後、
社員から1食あたり250円を徴収する予定です。
会社から社員に対する課税の問題はありますか?
優しさ溢れる社長ですね。
こんな優しさにも税金はかかるのでしょうか?
税務的には、「給与等に係る経済的利益」というテーマです。
[回答]
今回のケースは、食事代補助についての源泉所得税の徴収は必要ないものと考えます。
おぉ! 素晴らしい♪
と、結論だけだと「なぜ?」となりますので、根拠を見ていきましょう!
[解説]
1.食事代補助が非課税とされる要件
所得税法上、役員や従業員に支給する食事は、次の2つの要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されないこととされています。
(1)役員や従業員が食事の価額(仕出し弁当などを取り寄せて支給している場合には、業者に支払う金額)の半分以上を負担していること。
(2)食事の価額から、役員や従業員が負担している金額を控除した金額(会社からの食事代補助額)が、1ヶ月あたり3,500円(税抜き)以下であること。
※現金で食事代の補助をする場合には、深夜勤務者(シフト制など)に夜食の支給ができないために1食当たり300円(税抜き)以下の金額を支給する場合を除き、補助をする全額が給与として課税されます。
また、残業又は宿日直を行うときに支給する食事は、無料で支給しても給与として課税しなくてもよいことになっています。
2.具体的な計算例
今回のケースついて、上記1.の要件に当てはまるかどうかを確認してみましょう。
<計算例の条件>
・金額はいずれも税抜
・勤務日数は1ヶ月あたり22日
(1)食事の価額の半分以上を従業員が負担しているかどうか??
① 1ヶ月あたりの食事の価額は、360円×22日=7,920円
② ①より、その半分の価額は、7,920円×1/2=3,960円
③ 従業員の負担額は、250円×22日=5,500円
以上より、②≦③となるため、
「食事の価額の半分以上を従業員が負担する」という要件はクリア!
(2)会社からの食事代補助額が、1ヶ月あたり3,500円以下であるか??
1ヶ月あたりの食事代補助額は、7,920円-5,500円=2,420円です。
「食事代補助額が、1ヶ月あたり3,500円以下であること」という要件もクリアですね!
以上の”細かい×細かい×細かい”計算により、今回のケースの食事代補助制度については、所得税は課税されない(源泉所得税の徴収は不要)ものと考えられますね。
なお、食事代補助制度が所得税法上の要件を満たしていない場合には、
食事の価額から役員や使用人の負担している金額を差し引いた金額が”給与として課税”されますので、その部分について源泉所得税の徴収が必要です!
余談ですが、
なぜ1ヶ月あたりの補助金額が、3,500円なのだろう?
貨幣価値や物価上昇など、経済状況により補助金額は変化するのだろうか?
と、考えたりもしますが
そのあたりが”社会通念上”のラインなのでしょうか(笑)
[根拠法令等]
所法36、所基通36-24、36-38、36-38の2など