第3回目は9月2日(水)午後4時より、当事務所セミナールームで行いました。
第1回、第2回セミナーでは、数値に現れない「会社の価値(≒定性面)」を扱ってきましたが、
第3回からは、会計数値編に突入します。
「数字は苦手なんだ」とため息をついたり、頭を抱えたりする必要は全くありません。
経営者の頭の中で描いている目標を、職員のマンツーマンサポートで数値化します。
さて、第2回セミナーでも登場した「決算診断書」の内容をさらに深く読み込んで、
会計数値目標の作成をしていきましょう!
今回のテーマは「必要な売上と利益の計画を作る」です。
1stステップ 利益計画をつくる
利益の中でも「経常利益」の目標設定から始めます。
なぜかというと経常利益は、会社の本当の実力を表す利益だからです。
<経常利益目標の立て方の例>
・従業員一人当たりの経常利益目標(業界平均値など)に社員数を掛ける
⇒当事務所で業界平均値の統計情報をご提供します
・借入金を返済するために必要な利益を計算する
・過去の実績を参考に、利益の目標を出す
利益の目標の立て方は会社の状況によって様々です。
決算診断や現行期(進行中の会計期間)の会計数値を基に職員(所長も)が一緒に考えます。
2ndステップ 目標利益を達成するための売上高を計算する
目標利益を達成するための売上高は、目標利益から逆算することができます。
例えばこんな会社があったとします。
この会社の目標達成のための利益を実際に計算してみましょう。
(1)損益分岐点売上高(赤字にならないために必要な売上高)
収支トントン、利益も損失も0になる売上高のことを「損益分岐点売上高」といいます。
利益の出ない売上高ですので、当然これ以上の売上を目指すことになりますが、
まずは損益分岐点売上高という考え方からスタートしましょう!
< 計算式 >
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
750 = 300 ÷ 40%
損益分岐点売上高=750万円ということなので、
この会社では750万円より売上高が低ければ赤字、高ければ黒字になります。
損益分岐点売上高が低ければ低いほど、売上高が同じでもより多くの利益がでるので、
損益分岐点売上高は低い方が収益力が高いと言えます。
では、損益分岐点売上高を下げるにはどうしたらよいのでしょうか。
< 例 >
・ 固定費を減らす
・ 限界利益率を上げる(変動費減らす)
・ 売上単価を上げる
今回はこれまで経費の実績をもとに計算しましたが、
次回のセミナーで固定費の見直し計画や仕入・販売計画のつくってもう一度チェックします。
(2)借入返済可能売上高(目標利益を達成するために必要な売上高)
まず、返済に必要な利益はいくらか考えます。
最低でも、年間の返済金額分は利益が出ないと返済ができませんので、
法人税が30%だとすると(借入返済額÷0.7)ということになります。
借入金の返済原資は、「当期純利益(税引後利益)+減価償却費(もしあれば)」になります。
たとえば、この会社では、年100万円の借入金を返済していたとして計算してみましょう。
< 計算式 >
借入返済可能売上高 =(返済に必要な利益 ÷ 0.7 + 固定費)÷ 変動費率
1107 =( 100 ÷ 0.7 + 300 ) ÷ 40%
※減価償却がある場合は「(必要な利益+減価償却費)÷0.7+固定費」となります。
最低でも1107万円の売上がないと、借入金を返済できないという結果が出てしまいました。
さて、この会社の年間売上高は1000万円です。
社長は1107万円(10%増!)の売上が必要だと聞いて、青ざめてしまったことでしょう。
この「借入金返済可能売上高」も、損益分岐点売上高と同様に
固定費を減らしたり、変動費を減らしたりすることで下げることができます。
また、借入金の返済額を減らすことによっても必要売上高を下げることができます。
たとえば、借換を行って年間の返済額が80万円になったとしましょう。
< 計算式 >
借入返済可能売上高 =(返済に必要な利益 ÷ 0.7 + 固定費)÷ 変動費率
1035 =( 80 ÷ 0.7 + 300 )÷ 40%
この場合、必要売上高は1035万円になります。
返済額が年間20万円減ったことによって、必要売上高は70万円も低くなるのです。
「売上3%増だったらなんとかなりそう」と思うのではないでしょうか。
当事務所では「借入金の条件の見直し」にも積極的に取り組んでいますので
数多くの借換実績をもとにアドバイスを行っています。
(これまでの借換実績の一部はこちらの記事で紹介しています ⇒ 新規借入&借換案件)
(3)目標利益達成売上高(目標利益を達成するために必要な売上高)
ステップ1で計算した目標利益を達成するために必要な売上高を計算してみましょう。
翌期は今期の20%増の120万円の利益を目標にしたとします。
< 計算式 >
目標利益達成売上高 =(目標利益 ÷ 0.7 + 固定費)÷ 限界利益率
1178 = ( 120 ÷ 0.7 + 300 ) ÷ 40%
※ 実効税率を30%として計算しています。(1-0.3=0.7)
120万円の利益を出すためには、1178万円の売上が必要だということになります。
さて、目標利益・売上高の計画はいかがでしたか。
この計画の立て方にはポイントがあります。
それは、「低い目標では社員の能力を引き出すことができない」ということです。
だからといって無謀な計画では、「どうせ達成できない」と社員のやる気がなくなってしまいます。
現実的な数字を考慮しつつ「頑張ったらできるかもしれないぞ」という数字を見つけるのです。
そこに、これまでのセミナーで扱った「具体的な行動目標と役割分担(≒定性面)」が結びつくことで、
数値だけではなく、行動計画がリンクした経営計画書になります。
これが、社員のやる気を引きだし、会社の業績アップの力になります。